王仁三郎口述の霊界物語を音そのままに示すのが適当ではあるが,日本語の音だけで意味がわかるだろうか。夏目漱石の『それから』の(英文版Tuttle Classics) は,Soseki Natsume “And Then” となっている。小説の内容でもなくて,それから,をただ英訳している。教団分裂後の宗教法人大本の公式サイトであっても,エスペラント語のページはあるが,下記のように,外国語への翻訳努力は見られない。

http://www.oomoto.or.jp/Esperanto/PriOomoto/pg1216.html

 木庭次守編の論文を英文化する上で,『霊界物語』の英語表現は必須である。その表現例がない。

木庭次守編『霊界物語小事典』では,
 霊界: (1) 物質界以外の霊妙な世界の義。(2) 神霊の世界と幽界(地獄界)の略称。
「霊界」の項目名が次に続くが,ここではこの「霊界」の意義で十分と考える。

 同小事典で,
霊界的活動: 神霊世界に対応する活動。
霊界の消息: 神霊世界からの通信,又は霊界の紹介。
霊界の法則: 物質界,自然界の法則に根本的に相違する霊的事物によって形成された霊界の法則。
霊界物語編纂の大使命: 出口聖師が神示に従って,教祖の筆先を一つに取りまとめてその真相を完全に世人に示すようにされたこと。

 木庭次守編『霊界物語資料篇』の第一巻の特徴に,次の記述がある。
〇出口聖師は秘密とは必ず示すということであるが霊界物語の内容については,「開祖にも秘密にしていた」と語られた程である。大神様と開祖の神霊の請求によって,大正十年旧九月八日(新十月八日)神命により神々と人類の世界にたいし,初めて発表された最後の光明艮(とどめ)となる神教である。

 簡単に見てきたが,霊界物語には幽界も触れられているが,現界との繋がりで重要なのは神霊界とである。

 木庭次守編,1978. 『霊界物語の啓示の世界』日本タニハ文化研究所.

 上掲に収録されている「型の大本」p.4の欄外には,次の記事がある。

 現界は霊界のウツシ世の形(かた)
 霊界は想念の世界であって,無限に広大なる精霊世界である。現実世界はすべて神霊世界の移写であり,また縮図である。霊界の真象(かたち)をうつしたのが,現界,すなわち自然界である。ゆえに現界を称してウツシ世というのである。たとえば一万三千尺の大富士山をわずか二寸四方くらいの写真にうつしたようなもので,その写真がいわゆる現界すなわちウツシ世である。(霊界物語第二十一巻総説より)

 これが「霊主体従」の意義と言えるのであろう。

 鹿児島大学の一年生であった木庭元晴は,父から1970年3月1日消印の郵便書簡を受け取っている。父からの帰省要請に,敢えて帰省しないという連絡をした頃ではなかったか。初めて親元を離れて,学生運動などで羽を伸ばしていた頃に,この手紙がきた。文脈の点から多少変更しています。

一,霊界物語の世界観: 霊主体従と霊体一致。
 霊主体従: 宇宙は,神霊世界に始まり幽の幽,幽の顕,そして物質世界へと展開してきた。神霊世界の姿を縮小してつくられたのが顕の幽(天体)であり,(その後)顕の顕にあたる人間世界がつくられた。この考えのあらましは,物語第一巻,第十二巻,そして,第二一巻の総説に,掲載されている。
 霊体一致: 宇宙は,霊的なものと体的(物質的)なのものからなり,両者が合一した状態をなす。これを人に適用すれば,人も霊魂と肉体からなり,両者は融合状態にある。
  
一,霊界物語の歴史観
 1. 明治二十四年まで暗黒時代
 2. 明治二十四年〜昭和十七年までの五十年間は,準備時代
 3. 昭和十八年,未年(ひつじとし)から世界改造がはじまり,ミロクの世界の完成期に入る。

 簡単に言えば,今日までの世界史は神と人との断絶時代,暗黒時代という。

 〇地球の霊界を平和におさめて初めて,現界も平和になってくるという考え方。
 〇ヨメマセン

 このように霊界物語の意味を考えてきたのではあったが,急遽,重いタイトルは良くないと考えた。回教の『コーラン』は《読誦 (どくじゅ) されるもの》だそうだ。霊界物語もコーランではある。軽く考えると,神々のエピソード,口述された物語,であるから,

王仁三郎口述神話 Onisaburo’s Mythological Narratives, 81 vols.

が受け入れやすいように思っている。May 22, 2020記