はじめに

 be氏より何度か漠然と紹介があったRTK導入を考えてみた。今後,実験的な作業も含めてここに掲載するつもりである。なお,測位の本来の意味は3Dであるが,GNSS(全世界測位システム)はいわばジオイド面上の位置しかわからない。これは,ぼくの地形研究には使えない。be氏から次のWebページを紹介されたが,この記事のように,今後,重力値から詳細なDEMが作成されても,海岸での微地形の影響があり,海抜高度を求めるのには使えない。

国土地理院、GNSSによる標高決定に向けた「航空重力測量」を開始へ 2019年07月08日

 退職前には使えたノンターゲットトータルステーションが,後任の無理解で,年一週間ほどの利用であっても不可能になった。これがあればRTKに関心はなかった。基地局を作ってGPSアンテナを移動するのはかなり面倒なことと,ノッチなどの立体の断面を計測することができない。ドローンを飛ばせばいいのかも知れないがその気がない。地球上の詳細な位置情報は不要で,スマートフォンの数メートルの位置情報を起点にして,そこからのいわば相対的位置関係がわかればいい。現在のRTK技術で測量のcmオーダーの水平方向の基準点を求める意味があるのか,というのが,ぼくのちょっと悩ましいところかな?

 ノンターゲットトータルステーションをレンタルすると,一週間での調査に20万円ほども,かかってしまう。購入のために70万円,STS ノンプリズムトータルステーション TSS-200S,を消費するのは,奥さんの制止ゆえに厳しい。年間1カ月も使うのであれば強行してもいいのだけど,実績では年一週間。次の安いなあーーーー

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商品情報 ●一人で簡単測距 ノンプリで最大400m ●可視レーザーポインターで 位置確認 ●レーザー求心で簡単設置 ●防塵・防水性能 IP66 ●用途に合わせて距離測定

口コミが無い。

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たぶん,もっと安いのを見つけた。

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●測定可能範囲は、手軽な反射シートで約800m。
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口コミ一つ(アマゾン購入): 2020年2月15日に日本でレビュー済み 機能は価格を考えたらおおむね満足ですが、上下左右の旋回の締め付け調整が余りにもひどくて唖然としています。値段なんで少々機能が落ちるのは納得なんですが、現場で使用するテストは行ったはですが、今の状態はありえません。車でいったらエンジン性能はそそこなのにハンドリングが話にならない状態です。

 このページは,状況の変化に応じて,投稿,ポスティング,的に変化してゆく可能性がある。

1 二種類のRTK測位

図1 ソフトバンクのサービスエリアマップ https://www.softbank.jp/mobile/network/area/

 主に費用の観点から,二種類の方法があると思われる。一つは,国土地理院の電子基準点など,既存の基準局(既知点)のリアルタイム情報を利用して,移動局(観測点)の位置情報を捉える場合と,基準局そのものも自ら設定して,移動局の位置情報を捉える場合である。いずれの方法もインターネット環境が必要になる。 直近の調査地徳之島についてソフトバンクのネット環境を調べたら,図1のように,幸い山地域以外はカバーされていた。そういう時代になった。

 後者の場合,機器が2セット必要になるので,できれば,前者を採用することになる。後者の場合は,P2P, peer-to-peer, ピアツーピア,機能(サーバとクライアントといった区別なしに,接続されたコンピューター同士が同格で通信し合うネットワーク形態)を利用する手法である。P2Pの手法は自由度が効くのであるが,2セット用意しなければならないのはつらいところである。使用するスマートフォンは,現在のところ,iPhoneは対応していない。Googleのスマートフォンを持っていないぼくとしては,テザーリングつまりは電話契約をした2台のスマートフォンを用意する必要がある。

 というわけで,ぼくにとっては,何とか,前者の方法だけが利用可能と言える。

2 国土地理院の電子基準点など

 地理院ホーム>地球の形をはかる>GNSS連続観測システム>GEONET>GNSSを使用した測量のいろいろ,のリンクが次である。

https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi45009.html

図2 GGPS測位とRTK-GPS測位

 図2の測位法のうち,右図のRTK-GPSは、両点で位相の測定を行い基準局で観測した位相データを観測点に送信する。観測点のGNSS受信機では、受信データと基準局から送信されたデータをリアルタイムで解析することにより、観測点の位置を決定する。この方法では,各種の誤差要因が消去されることから,数cmの誤差で位置が決定される。

 地理院ホーム>基準点・測地観測データ>GEONET GNSS連続観測システム では,RTK-GPS利用のための種々の情報のリンクがある。そのうち,2点について,ここに紹介する。

一つは,国土地理院、海上保安庁が所有するGPS連続観測点やデータの所在などの情報の閲覧: GNSSデータクリアリングハウス
もう一つは,データ提供サービス: 電子基準点データ提供サービス

図3 徳之島天城町の電子基準点情報 上部
図4 徳之島天城町の電子基準点情報 下部

GNSSデータクリアリングハウスで,徳之島,と検索した結果で,1件のみヒットした。これによると,九州農政局の事務所に設置されている。

 直近の調査に当てはめると,この電子基準点を使用することになる。もちろん,利用申請をする必要がある。

 電子基準点提供サービスでは、国土地理院のGEONET(GNSS連続観測システム)で得られた電子基準点観測データや解析結果等をインターネットを利用してユーザの皆様に提供することを目的としていて,ユーザー登録,をする必要がある。具体的な内容については別途まとめたいと思う。

3 トラ技2周波RTKスタータ・キット【高速測位タイプ】

 移動局だけを自ら作成して,RTK-GPS利用を実施するための,道具立てをここに確認したい。この「トラ技2周波RTKスタータ・キット【高速測位タイプ】」が,ぼくにとって最も簡易で割安,46,200円(税込),のように感じた。ただ,このツールは「フルセットに先駆けて,キット単体で販売中!価格46,200円(税込) 2019年8月10日発行」とあり,1年半前なので,フルセットを探したが見つからない。そして,これはパソコン接続用である。パソコンに代わってAndroidスマートフォンに改善されたのが,「1cmの精度の自作スマホナビを作ってみよう」である。

https://shop.cqpub.co.jp/hanbai/books/I/I000316.html

トラ技2周波RTKスタータ・キット【高速測位タイプ】

概要: スマホや自動車のナビゲーションなど,衛星を使った従来の測位法(単独測位という)の精度は3〜10mです.移動局(車や人)は,高速で地球を周回する複数の衛星との距離を測り,そのデータから自分の位置を割り出しています.移動局だけで測位をするので単独測位と呼びます.別途,測位レシーバを地上に固定し,その位置情報(緯度,経度,高度)と受信電波の波長を放送する新しい測位法「RTK(Real-Time Kinematic)」を使うと,1〜数cmの精度が得られます。

キット:
(1) ZED-F9P搭載基板  ぼくのメモ:パソコンと測位レシーバを繋ぐため
 外形30.5mm×37.0mm,全機能ピンを2.54mmピッチで取り出し可能
 電源電圧5V(USB),消費電流130mAmax(通常時は100mA以下)
 パソコンとの接続にmicroUSBコネクタ,アンテナとの接続にSMAコネクタを搭載
(2) 2周波対応アンテナ ANN-MB-00  ぼくのメモ:測位レシーバのアンテナ
 幅82mm,奥行き60mm,高さ22.5mm,重量173g(ケーブル含)
 SMAコネクタ付き5mケーブル
(3) microUSBケーブル  ぼくのメモ:(1)のコネクタのケーブル 
 ZED-F9P搭載基板とパソコンの接続用です.
(4) トランジスタ技術 2019年10月号  特別号定価1,202円(税込)   ぼくのメモ:マニュアルとソフトDVD
 ZED-F9Pの使い方や応用事例が掲載されています.
 利用に必要なソフトウェアが収録されたDVDも付録します.

4 1cmの精度の自作スマホナビを作ってみよう

 このキットを使った製作過程を示したページが次のようである。

「1cmの精度の自作スマホナビを作ってみよう」 2020年3月6日 東京海洋大学 海洋工学部

https://www.mirai-kougaku.jp/laboratory/pages/200306.php

準備するもの

 このうち,「RTK対応GNSS受信機 ublox ZED-F9P + GNSSアンテナ」は,「トラ技2周波RTKスタータ・キット」に含まれているようであるが,「Bluetoothモジュール RN-42」は含まれない。「トラ技2周波RTKスタータ・キット」はWindowsパソコンで制御する設計になっているが,この「1cmの精度の自作スマホナビを作ってみよう」では,スマホで制御するようになっている。測量が屋外での作業であることを考えると,スマホでの制御の方がありがたい。この「1cmの精度の自作スマホナビを作ってみよう」の設計が気に入っているので,以下,これに限定して作成法を確認したい。

図5 全セット

 図5では,「RTK対応GNSS受信機 ublox ZED-F9P」と,「Bluetoothモジュール RN-42」が同じ基盤にセットされている。最も上のモバイルバッテリーからGNSS受信機にケーブルがμUSBで接続されている。GNSSアンテナから,SMAコネクタ付きケーブルが基盤に接続されている。
 そして,Androicスマートフォンが必要である。

以上,Mar. 4, 2021記

 図5のGNSS受信機とBluetoothモジュール,について,以下,確認したい。図6はスマホナビの基盤で図5の電子基板の拡大図である。図7は,RTK対応GNSS受信機 ublox ZED-F9P + GNSSアンテナである。https://www.ardusimple.com/product/simplertk2b-basic-starter-kit-ip65/ に掲載されている。図6の緑色のモジュールは,図8に示したBluetoothモジュール RN-42である。図7の赤丸で囲んだ部分は,「近距離通信から遠距離通信の幅広い製品用途で使用可能」なIEEE802.15.4に準拠したモジュールで,これとそっくり交換されているのである。

図6 図5の電子基板の拡大
図7 RTK対応GNSS受信機 ublox ZED-F9P + GNSSアンテナ
図8 Bluetoothモジュール RN-42

 図8のBluetoothモジュールについては,秋月電子通商,
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-08690/,のページでは,「既存システムの802.15.4 モジュールと差し換えるだけでBluetoothへの移行が可能な認証済みモジュールです。バージョン2.1 + EDR (Enhanced Data Rate)をサポートした認証済みBluetooth モジュールです」,とある。
 装填の方法であるが,「GNSS受信機の出力(TX)と入力(RX)ピンを,それぞれ,Bluetoothモジュールの入力(RX)と出力(TX)ピンに接続する。ここで紹介されているArdusimpleのF9PボードとRN-42のxBee互換ボードを利用する場合,図6の写真のようにxBeeヘッダーに差し込むだけでOKです」(文章改変),とある。

図9 RN回路図

 秋月電子通商の前掲ページでは,データシート,のリンクがある。
https://akizukidenshi.com/download/ds/microchip/RN42X.pdf
この中の回路図が図9である。赤丸で示した,左辺の上から二つ目が出力(TX),三つ目が入力(RX)である。
 なお,Rx(D)とTx(D)は,それぞれReceiver(受信)とTransmitter (送信)の略称で,基本的にはTx端子を相手のRx端子に接続し,同じ電源を使用すれば,お互い通信が可能になる。

 このBluetooth付受信機完成の後,アプリインストールなどの作業がある。

5 Drogger DG-PRO1RWS利用

 DG-PRO1RWSを使うと,低価格で移動体の瞬時の測位情報を得ることができる。

https://www.bizstation.jp/ja/drogger/dg-pro1rws_index.html

 次のように,RWPパッケージが用意されている。品番: RWP 価格 79,800(税抜)

https://www.bizstation.jp/ja/drogger/rwp_index.html?tab=rwp

おわりに

図10 NEC_LAVIE Tab E TE508/KAS PC-TE508KAS

 草臥れ儲けというか,このRWPパッケージは素晴らしい。Android携帯が必要になるが,電話機能は不要である。iPhoneでテザーリングすればインターネットに繋ぐことができるので,Androidスマートフォンではなくてwifiとbluetooth機能があるタブレットPCがいいかと思う。次のものがいいかと思うがどうだろうか。

NEC LAVIE Tab E TE508/KAS PC-TE508KAS 最安価格(税込):¥19,800発売日:2020年 1月23日

さて,このシステムを採用する場合,高度測定をどうするかですなあ。

以上,Mar. 5, 2021記