前立腺がん prostate cancer

はじめに

 勤務先の年一回の健診で,PSAが4.0になって以来,このPSAさんとは長く付き合ってきた。これが何かもわからなかった。10月24日,病院で,図2のPSA値の結果から,生検を受けることになって,明日,入院なので,PSA値の意味と生検の中味を調べてみた。
 mid 17th century: via French from modern Latin prostata, from Greek prostatēs ‘one that stands before,’ from pro ‘before’ + statos ‘standing.’

1 PSAと前立腺がん

 PSA値が高いぼくからみて参考になったのは次のサイトである。
前立腺がん PSAとは/前立腺特異抗原 prostate specific antigen

 このサイトで,PSA FT比(Free-Total PSA比、エフティー比),という項目があり,次のように示されている。

図1 PSA FT比(Free-Total PSA比、エフティー比)

 一般的に前立腺がん細胞の中にはFree-PSAが少なく、逆に良性の前立腺細胞はFree-PSAを多く含むことが知られています。したがって、PSA FT比が小さい(つまりFree-PSAが少ない)ほど、前立腺がんが存在する可能性が高く、PSA FT比が高い(つまりFree-PSAが多い)ほど、前立腺肥大症などによりPSAが上昇している可能性が高いと判断されます。何%であれば“がん”が存在するという明確な数値はありませんが、PSA FT比が10%未満であれば前立腺がんの可能性が高く、20%以上であれば前立腺肥大などによるPSA上昇の可能性が高いと言われています。10−20%の間の場合、どちらとも言えません。この検査のみで前立腺がんの有無を確定することはできませんが、他の検査と併せて、がんの可能性を判断します。

 この情報をぼくのものと付き合わせると,Free-Total比 = 1.61/5.57 x 100 = 28.90 (%) となって,がんではなく,前立腺肥大などによるPSA上昇の可能性が高い となる。一昨日の検査結果であるが,担当医からこの説明は一切無かった。不信感が芽生えている。

図2 ぼくのF/T比

 造影剤を入れたMRI検査(2年前?),触診,超音波(一昨日)などの検査はすでに受けているが,その情報の評価は知らされていない。ぼくが自己診断できるのはこれだけ。今日は6時間絶食で,単純MRI検査を受ける予定。

2 前立腺針生検とは

 前掲のサイトでは,ターゲットフォーカスの手法が取られているが,箕面市立病院のWebサイトでは,従来型の手法でするようだ。今日のMRI検査の際に検査技師の方に質問したら,従来型であることが確定した。
箕面市立病院泌尿器科の前立腺がんについて では, 図3と合わせて,「肛門から超音波の道具を挿入して前立腺を直接観察しながら、細い針を前立腺に直接刺して糸状の組織を採取してくるものです。当科では1泊2日入院で検査」という簡便な記述がある。

図3 箕面市立病院の生検システム

 この箕面市立病院の情報は,ほぼ2013年当時のもので,10年近く前である。ただ,図3の設備は変わっていない印象を受ける。超音波発信プローブもすっごく,ふるーい。
 まあ,28日にわかることである。まったく不要な地下鉄延伸に対応して,この市立病院は新船場に移転するようなので,機器更新が遅れている可能性が高い。

 なお,東京国際大堀病院では,MRI-超音波弾性融合画像前立腺生検システム『UroNav』,が導入されており,このページに説明がある。

以上,Oct. 26, 2020記。

3 前立腺針生検を受けて

 10月27日,9時10分にお願いしたタクシーで市立病院まで行き,9時半には入院手続きの窓口で手続きをして,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査で1時間待機して,また入院窓口に戻って,4階までエレベーターで向かう。西病棟スタッフステーション窓口で更に手続きをして,478号室へ。四人部屋ですでに三名が入居済み。ぼくのベッドは今朝まで別の方が居たようだ。12時過ぎに昼食を摂った。その撮影は忘れた。

 夕焼けを見ようと,午後5時過ぎにステーションそばのラウンジに出かけた(図5,6)。

図5 北方向の箕面山地の西よりの夕焼け
図6 同東よりの風景でわが家も何とか見えるか

 明日は手術(針生検)だ。体がだるい。看護婦さんは夜勤に交替。図7,8の写真撮影の後,高田医師が顔を出した。午後7時だったか8時だったか。

図7 我が室(右手前)からスタッフステーションを望む
図8 針生検前夜のわが家方面

 図9は手術前夜の夕食だ。これが3日間で,一番ご馳走だった。図10は手術日の朝食だ。牛乳の代わりにオレンジジュースだ。ごはんはぼくの日常食べる量の2倍以上だが,おかずは少ない。手術のために昼食抜きだ。午前10時ぐらいだったか,浣腸を受けた。実はそれ以来,手術後の水状のもの以来,この29日土曜日の夜まで未だ大は出ていない。

図9 27日夕食
図10 28日朝食

 図11は手術前(左手の棚の薄い緑色のものが受け取っていた手術着),図12は手術後。予定では2時半ぐらいからの手術であったが,27日の午後,午後4時ぐらいからと知らされた。28日になって早まって12時過ぎからとなった。ぼくの前の患者さんに対する高田医師の手術が予定より早く進んだためであった。高田医師は一体いつ昼食を摂るのか。外来でも午後2時すぎでもずっとやってる。手術室のなかで,「おつかれでは?」と聞いてしまった。

 手術台の比較的そばにはMRIの画像二枚が大きく表示されている。がんであればこの前立腺の画像が汚く暗くなるらしい。ぼくのは綺麗なので心配は少ないとのことであった。局部麻酔薬を午前10時頃に飲んでいた。それが効いていることを確かめて,さらに何とかの注射を尾てい骨のそばにされて,生検手術に入った。まあ,過去の人生で恥ずかしい極地の姿勢での手術であった。十字架にかけられた気分である。ぼくが見たこともない部分も看護婦さんも見ている。
 なお,図3の手術台が使われたが,この写真とは違い,腰より上はベッドで寝る形になっていて,歯医者さんの椅子とは違う。
 超音波発信プローブのそばに採取針が付いていて,それがシュパンッ,とかなんとか音が出て,グサッ,と刺さる。右手で数えたら13回であった。12回と聞いていたので,13回目が終わった後,「13回でしたねえ」と笑いつつ,高田医師に告げた。とにかく,終わった。この夜も高田医師が顔を出してくれた。

図11 針生検手術前
図12 針生検手術後

 帰りは看護婦さんの手押しの車いすであった。尿意が強く,ベッドに戻る前に,トイレ利用をお願いした。看護婦さんが外で待機するなか,とにかく時間がかかった。なかなか出ない。液状の便も出た。ベッドに戻って別の看護婦さんに撮影してもらったのが図12である。この写真を家族にメッセージとラインで送った。すぐに各人から返事があった。すぐに尿意があったが看護婦さんを呼ぶのが悪くて,ほぼ1時間ぐらいは我慢した。トイレに運んでもらったがとにかく出ない。少なくとも1時間余りは坐っていた。出そうなのに出ない。図12の撮影の際に看護婦さんが簡易エコーで膀胱内の尿量を計測していた。それでこの愁訴をしたら,前回の計測と比べてあまり溜まっていないという。本人の尿意は高いのだが。水分を取れといわれて,そのようにしたら,それなりに出るようになった。さきほどのMRIの画像で高田医師にぼくの前立腺肥大の大きさを聞いたら,高田医師の5倍はあるという。前立腺を部分切除せんとあかんのではないか,と心配もしたぐらいであった。

 図13は手術当日28日の夕食である。これが待てず,地下のヤマザキショップで180円のコンビニコーヒーを飲みながら,初日に3袋買った菓子(ナッツ)を一袋一気に食べた。

図13 手術後の夕食
図14 退院日の朝食

以上,Oct. 29, 2022記。

追記 Oct. 30, 2022: 本日,快便。検査入院のストレスは全快かな。

4 検査結果

 本日 Nov. 7, 2022,検査結果の報告を受けた。

図15 病理組織診断報告書 Oct. 28, 2022

1 MRIレポートでは,前立腺がんは指摘できません。内腺は腫大。腫大リンパ節なし。診断は,前立腺がんは指摘できません。BPHとあった。
2 図15の病理組織診断報告書によっても問題が無いということであった。
 また,開業医さんに戻って三ヶ月に1回のモニタリングを受けることになるが,血液検査項目に,PSA値だけでなく,F/T値も一緒に,お願いしようかと思っている。
 ぼくは前立腺がんには今後ならないのか,と主治医さんに聞いたら,10年,20年後になる可能性もあるということであった。

 主治医から結果の報告を受けた際には心に響かなかったが,大起水産で「さけいくら丼」を食べている時,プールで泳いでいる時,スタバでコーヒーを飲んでいる際に,改めて,これまで続けてきたタニハでの片付けや,種々の論文作成プロセスを今後も続けることができると,強く感じた次第であった。11日には,ボストン交響楽団(指揮アンドリス・ネルソンス)による,ショスタコーヴィチ交響曲第5番「革命」,そして,ベートーベンピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ピアノ内田光子)などを楽しむことができる。

以上,Nov. 7, 2020記。

5 フリーPSA/トータルPSA比 the ratio of free PSA to total PSA ratioの利用をして欲しい

 今日,箕面市立病院から紹介された北千里の医院に行った。退院後,生検された医師から託された手紙をこの北千里の医院に持参した。そして,その場で,今後のモニターの際には, fPSA/tPSA比の検査をお願いしたい旨,伝えた。その医師はご存知無いというので次回資料を持参すると伝えた。そして本日,手渡して,次回はPSA値が高い場合,まずはこの医院で,検査機関に出すPSA比の血液採取をして頂くようにお願いした。手渡した資料は次のものである。
フリーPSA/トータルPSA比(Primary Care)
PSA F/T比 (LSI メディエンス)
Ito, Y., and others, 2020. Calcitonin levels by ECLIA correlate well with RIA values in higher range but are aƒected by sex, TgAb, and renal function in lower range. Endocrine Journal, Vol. 67, No. 7, pp. 759-770.

 この三番目のものが最新の論文であろう。ここで,次の指摘は注目すべきところである。p. 760の抜粋を次に。
The ratio of fPSA to tPSA has been used to improve the PCa detection and the values lower than 0.25 are indicative of PCa. However, the free/total PSA ratio as a PCa biomarker has been questioned for its beneft due to its high false-positive rate in the diagnosis. In order to improve PCa diagnosis, PSA kinetics, PSA density and velocity have also been used, nonetheless they are not good predictors of aggressiveness. 

 とにかく,現状の検査機関を使う限りは,PSA値が4.0〜10.0で,検査過程で増大してゆく場合,この比が悪性のものか,良性の前立腺肥大によるものかを,決定する上でかなり信頼性の高いものであることは確かのようだ。閾値は0.25でこれよりこの比が高い場合は良性と判断され,生検の必要性は無いということだ。ぼくの場合,図2のように,29% > 25% であったので,生検の必要性は無かったということである。統計学的評価でそう言われている。

以上,Dec. 23, 2022記。